学際大学院機構機構長 ご挨拶
知識基盤社会の到来とともに、今日の社会においては、取り巻く環境の変化は速く、その複雑度も増しています。このような状況において、現代社会に山積する種々の課題を解決し、社会を持続的に発展させていく上で、大学とりわけ大学院教育に向けられる期待もより多様でかつ大きなものになっています。アカデミアにおける研究の推進だけに限らず、イノベーション創出やSDGsなどに代表される全人類的社会課題の解決に資する高度な博士人材「知のプロフェッショナル」の育成を担う大学院教育への期待が各方面から高まっています。
大阪大学ではこのような認識のもと、大学院における博士課程学生への高度な専門教育に加えて、さらに思考や知識の幅を広げ、多面的に物事をみる力を涵養し、博士人材の更なる高度化に資するため、2005年(平成17年)以降、20年近くにわたり、横断型教育プログラムの実施に取組んできました。研究科間の“壁”(垣根)を低くし、各研究科の教員が所属を越えてプログラムに参画し、学生も所属を越えて履修することができる仕組みを構築し、研究型総合大学としての豊富な教育研究リソースを活用した分野横断・部局横断型の大学院教育の推進に取組んできたところです。
2005年から横断型教育に関する取組みの検討を開始し、2008年から学問テーマに沿った授業科目を体系的に構成した高度副プログラム、2011年からは副専攻プログラムの運用を始めました。同じく2011年から学生を広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーへと導くための博士課程教育リーディングプログラム、2019年からは社会にイノベーションをもたらすことができる博士人材を育成する卓越大学院プログラムなどを実施しています。さらに2020年からは、これまでの横断型教育における取組み等での経験・成果を活かした本学独自の大学院教育プログラムとして、オナー大学院プログラムを実施するとともに、多彩な横断型教育プログラムを推進・統括していくため、「学際融合・社会連携を指向した双翼型大学院教育システム」(Double-Wing Academic Architecture: DWAA)構想を策定し、全学的に推進しています。なお、このDWAAは分野等を越えて様々な科目群を集積し運用することから、「総合知」を推進する取組みにもなっています。
これらの既存の研究科・専攻の枠を越えた横断型教育プログラムを統括・管理し、関係部局との連携の下で、全学的な立場から大学院教育改革を推進するための組織として、2018年8月に国際共創大学院学位プログラム推進機構を設置しました。さらにこの度、より一層の大学院教育支援体制の基盤強化を図るため同機構を発展的に解消し、大阪大学学際大学院機構を2024年4月に設置したところです。
今後、学際大学院機構では、すべての人がその多様性を生かすことで社会を支え、豊かで幸福な人生を享受できる社会、すなわち「生きがいを育む社会」を実現していくため、DWAAをさらに推進していく所存です。様々なキャリアパスにつながる学びを促進する学生個人に最適化された百人百様の学習・カリキュラム支援体制を構築し、グローバル社会において答えのない課題にチャレンジし、未来社会のあり方を創造し社会変革を導く博士人材の育成に貢献してまいります。
令和6年4月
大阪大学学際大学院機構長(理事・副学長)
田中 敏宏