死因究明のための高度薬物分析能の涵養
死因究明は犯罪死見逃し防止や公衆衛生向上のために極めて重要ですが、我が国の死因究明制度は諸外国に比べ十分とは言い難く、近年でも犯罪死を見逃した事例が報道されています。この状況を打破するため令和2年4月から「死因究明等推進基本法」が施行されましたが、その任にあたる専門家は極めて少ないのが現状です。特に薬毒物による犯罪は見逃しやすく、高度分析能を有する専門家の育成は急務となっております。また、医薬品、日用化成品の誤使用による中毒に対応する救急医療機関、異物添加による事件、事故に対応する科捜研や医薬品・食品・化学メーカーの品質管理部門においても、薬毒物中毒の専門知識と高度な薬物分析能を有する人材が求められています。
これらの問題を解決するため、本教育プログラムは、特に薬中毒分析を専門とする医療機関勤務の薬剤師や科捜研研究員、さらには、民間企業や行政機関等で薬物分析に携わる専門家を対象に、薬毒物分析能の向上、薬毒物中毒の専門知識の深化を目指し、倫理性、社会性、専門性、応用力、リーダーシップを兼ね備えた高度薬毒物分析者の育成を行います。
このプログラムは、学校教育法(第105条等)に定められた履修証明制度に基づくプログラムで、定められた期間内にプログラムが定める授業科目を履修し、所定の単位を修得することで、大阪大学総長から修了認定証(履修証明書)が授与されます。
身につく能力
- 死因究明において薬物分析が求められる背景を理解し、将来の展望について論議できる。
- 薬中毒分析に関連した最新技術の原理を理解し、自身で新規分析法を開発でき、現場で遭遇する様々な分析的なトラブルに対処できる。また、分析精度管理など、分析ラボのマネージメントが可能となる。
- 臨床、死因究明の現場で遭遇する薬物中毒者の症状、所見を診断、鑑別でき、適切な対処法を提示できる。
履修条件・履修方法
以下の(1)または(2)を満たす者
(1)令和6年3月までに大学を卒業し、あるいは卒業見込みの者で、薬剤師免許を取得した者
(2)薬物分析業務に従事している者、あるいはその予定の者